優先席付近では携帯電話の電源を切るべきか


1994年にサービスが始まった第二世代携帯電話movaの運用が2012年3月31日に終了しました。これを機にそろそろ見直した方がいいと思うことがあります。それは「携帯電話利用のルール/マナー」です。

我が国で現在一般的な携帯電話利用ルール/マナーとされているものを列挙してみると、以下のような感じかと思います。

A.公共交通機関

  • A-1.列車、路線バス車内ではマナーモードとし、特急列車等のデッキを除き通話は自粛。
  • A-2.列車、路線バス車内の優先席付近では電源を切る。
  • A-3.航空機内では航空法及び航空法施行規則に基づき基本的に無線機器の使用は禁止。

B.医療機関

  • B-1.指定された場所以外では電源を切る。
  • B-2.医療機器への影響がないことが確認されているPHSについては職員用に限り適用除外。

C.その他

  • C-1.映画館、コンサート会場など公演の妨げとなる場所では電源を切る。
  • C-2.肖像権や著作権の保護が求められる展覧会やイベント会場などでの携帯電話の使用は控える。

最近気になって仕方ないのはA-2.の「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください」という呼びかけです。A-2.については心臓ペースメーカーや携帯式除細動機などの植え込み型医療機器の誤作動を招く恐れがあるというのが以前から根拠であるとされてきました。総務省では植え込み型医療機器への影響を防止するため、無線機器の種類によって以下のようなガイドラインを定めています。

1.携帯電話

植込み型医療機器の装着部位から22cm程度以上離す。

2.携帯電話用小電力レピータ

特別の注意は必要としない。

3.ワイヤレスカード(非接触ICカード)システム

心臓ペースメーカ:リーダライタ部(アンテナ部)から心臓ペースメーカの装着部位を12cm程度以上離す。
除細動器:リーダライタ部と除細動器装着部位を密着させることは避ける。

4.電子商品監視装置(EAS機器)

(略)

5.RFID機器(電子タグの読み取り機)

(略)

6.無線LAN機器

特別の注意は必要としない。※1機種のみ影響が確認されたが厚労省から注意喚起済。

7.WiMAX方式の無線通信端末

特別意識する必要はない。密着させることは避けるべき。

【参考】

各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針/総務省

携帯電話に関しては第二世代携帯電話端末の一部機種で15cm離した状態で植え込み型医療機器に影響を与えた例があったため22cm離すというガイドラインが設けられた経緯がありますが、第三世代携帯電話端末では8cmまで近づけないと影響しないという調査結果が出ています。

【参考】

電波の医療機器等への影響に関する調査/総務省

医療機関内においては生体テレメータなどの医療用無線機器が多く利用されていることから、PHSなど電波の干渉が発生しないことが確認された無線機器以外の利用制限が維持されるべきだと思いますが、最近では医療機関内での利用を一律に制限するのではなく、外来待合室、食堂、病棟個室などでは携帯電話の利用が許可されるようになってきています。加えて、A-3.の航空機内については、以前は搭乗から降機まで機内に居る間は常時携帯電話等の使用が禁止されていましたが、平成23年4月1日以降は航空機が地上停止中のドア開放時の利用制限は緩和されました。

【参考】

運航の安全に支障を及ぼすおそれのある使用制限電子機器/国土交通省
航空機内における携帯電話等の使用について/国土交通省

冒頭に列挙したルール/マナーのうち、A-1.に関してはあくまでも「マナー」であり、「ルール」ではありません。実際、海外ではこのような呼びかけはされていないようですし、外国人観光客などにはこのようなお願いは奇異に感じられているでしょう。なんでも「ご協力のお願い」という形に丸めてしまい、守らなければいけない「ルール」と守るとお互い気持ちいい「マナー」の区別をつけようとしないのはよくないです。非合理的なことをなんとなく強制される社会は息苦しいです。

第二世代携帯電話の国内での運用が終了した現在では上記A-2の「列車・バスなどの優先席付近では電源を切る=データ通信も禁止」というルールは過剰な制限であり、実際に守っている人も少ないことから見直されるべきだと考えます。

現実に即して変わってきたルールもあるのに、なぜA-2.の呼びかけがいつになっても変わらないのか不思議です。公共交通機関が優先席付近で携帯電話の電源を切るように呼びかけることによって、植込み型医療機器を使用している人に対して不安を煽っている側面もあるのではないかとさえ思います。むしろ、優先席付近かどうかに関わらず、混雑する車内で植込み型医療機器を装着している人がいるかもしれないのに他人の背中の上でモバゲやSNSやメールに没頭してる人が多いことの方が問題だと思うのです。

携帯電話の使用をめぐる車内トラブルを何度も目撃していますが、そうしたトラブルはルールやマナーが現実に即していないために起きている側面もあると思います。ルールやマナーは時代に応じて、現実に即して見直されるべきだと個人的には思います。優先席付近でスマートフォンに夢中になっている若い子たちを見ながらそんなことをふと思ったのでした。

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